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音よりも光よりも
はやく、早く、速く。表記でこんがらがりました。
|何よりはやく
ランドリーバスケットを抱えて、掃除にいそしむ彼の傍らで彼女は上機嫌にピアノを弾いていた。若干彼が眉根を寄せて口元が引きつっていたのは、彼女のピアノがあまりに自由で楽しそうだったからだ、それも、ものすごい速さで。
彼女は鍵盤から最後に勢いよく指を離してから、気持ち良さそうに息をつく。そしてピアノの横で呆気にとられている彼のほうを向いて、くるりと表情を変えてもの問いた気な顔をした。
「音って案外遅いんですよね、」
「?」
皺が癖になる前に早く洗濯物を伸ばしたいのだが、彼女の質問に彼は怪訝に顔をしかめて足をとめたまま。
「ほら、雷でもピカッて光って、だいぶ経ってゴロゴローっていうでしょ?山びことかも、遅れてヤッホーって。あ、先輩は小さいころ山に向かってヤッホーなんて言いませんでした?それとも、もしかしてモンブランに向かってヤッホーって言ってました?」
言うかバカ。と一度きちんと渋面を作ってから彼女を見た。
「なに?さっきの早弾きでも満足できなかったの?」
彼女はピアノチェアを少しひいて足を放り出して遊ばせている。
「いえー、そういうわけではないのですが。早く早く!って思ってても、指と気持ちが追いつかない時もあるんだなぁ、って思ったり。まぁ、それも別に音の速さとピアノは無関係なんですけどね。」
「十分早かったけど?というか早すぎておそらくガーシュウィンが聞いたら卒倒するくらいだと思ったけど?」
元気よく宙に浮いていた足は、ひゅんと力なく床へ落ちた。今度はつま先でペダルを撫でるようにして少しつまらなさそうにしている。
「むぅ。ちょっと、勢いあまっただけですよー。先輩はないですか?早く早く!て急くような。音よりも光よりも早く!ていう位のこと。あ、ツアー帰りでのだめに久しぶりに会いたくて、本当は飛行機でびゅんって、ひとっ飛びに帰りたいけど先輩は鉄道だから、早く早く!て車輌の中でも走りだしたいくらい?とか。」
「バーカ。」
きまり悪そうに言う彼の頬は少し赤い。湿ったタオルを一枚顔に投げられ、あ、と気づいた彼女は嬉しそうに笑った。
「先輩、昨日はめずらしく飛行機で帰ってきましたね?」
嬉しそうに奇声をあげながら鍵盤を撫でる。高速で長音階、それは彼に遮る様に手を取られたので歪な和音で終わってしまった。ぐいと掴まれた腕は椅子から立ち上がるよう促される。
「干すの手伝えよ、掃除なんて早く終わらせるぞ。」
「のだめが手伝えばさっきの一曲よりも早く終わっちゃいますよ!」
「バーカ。大体お前が散らかさなきゃいいんだよ。」
彼の後ろをタオルを握りしめて彼女がついてゆく。
「早く乾くといいですねぇ。音より早く、光より早く?のだめ、もう一回ガーシュウィン弾きますね。その間に、」
彼女の言葉より早く、彼が唇を掠めとったので彼女のガーシュウィンはどこかへ行ってしまった。
「早く乾いたら何すんの?」
開け放した窓の脇に整然と干された洗濯物は、外からの風で大人しく揺れていた。
ランドリーバスケットを抱えて、掃除にいそしむ彼の傍らで彼女は上機嫌にピアノを弾いていた。若干彼が眉根を寄せて口元が引きつっていたのは、彼女のピアノがあまりに自由で楽しそうだったからだ、それも、ものすごい速さで。
彼女は鍵盤から最後に勢いよく指を離してから、気持ち良さそうに息をつく。そしてピアノの横で呆気にとられている彼のほうを向いて、くるりと表情を変えてもの問いた気な顔をした。
「音って案外遅いんですよね、」
「?」
皺が癖になる前に早く洗濯物を伸ばしたいのだが、彼女の質問に彼は怪訝に顔をしかめて足をとめたまま。
「ほら、雷でもピカッて光って、だいぶ経ってゴロゴローっていうでしょ?山びことかも、遅れてヤッホーって。あ、先輩は小さいころ山に向かってヤッホーなんて言いませんでした?それとも、もしかしてモンブランに向かってヤッホーって言ってました?」
言うかバカ。と一度きちんと渋面を作ってから彼女を見た。
「なに?さっきの早弾きでも満足できなかったの?」
彼女はピアノチェアを少しひいて足を放り出して遊ばせている。
「いえー、そういうわけではないのですが。早く早く!って思ってても、指と気持ちが追いつかない時もあるんだなぁ、って思ったり。まぁ、それも別に音の速さとピアノは無関係なんですけどね。」
「十分早かったけど?というか早すぎておそらくガーシュウィンが聞いたら卒倒するくらいだと思ったけど?」
元気よく宙に浮いていた足は、ひゅんと力なく床へ落ちた。今度はつま先でペダルを撫でるようにして少しつまらなさそうにしている。
「むぅ。ちょっと、勢いあまっただけですよー。先輩はないですか?早く早く!て急くような。音よりも光よりも早く!ていう位のこと。あ、ツアー帰りでのだめに久しぶりに会いたくて、本当は飛行機でびゅんって、ひとっ飛びに帰りたいけど先輩は鉄道だから、早く早く!て車輌の中でも走りだしたいくらい?とか。」
「バーカ。」
きまり悪そうに言う彼の頬は少し赤い。湿ったタオルを一枚顔に投げられ、あ、と気づいた彼女は嬉しそうに笑った。
「先輩、昨日はめずらしく飛行機で帰ってきましたね?」
嬉しそうに奇声をあげながら鍵盤を撫でる。高速で長音階、それは彼に遮る様に手を取られたので歪な和音で終わってしまった。ぐいと掴まれた腕は椅子から立ち上がるよう促される。
「干すの手伝えよ、掃除なんて早く終わらせるぞ。」
「のだめが手伝えばさっきの一曲よりも早く終わっちゃいますよ!」
「バーカ。大体お前が散らかさなきゃいいんだよ。」
彼の後ろをタオルを握りしめて彼女がついてゆく。
「早く乾くといいですねぇ。音より早く、光より早く?のだめ、もう一回ガーシュウィン弾きますね。その間に、」
彼女の言葉より早く、彼が唇を掠めとったので彼女のガーシュウィンはどこかへ行ってしまった。
「早く乾いたら何すんの?」
開け放した窓の脇に整然と干された洗濯物は、外からの風で大人しく揺れていた。
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