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ディアー・ディアー
アパルトマンの人たち
|ディアー・ディアー
「さっさと仲直りしてきなさいよ。どっちが悪いのか知らないけど、二人とも謝るの下手なんだから。」
友人はソファで楽譜をめくりながらキッチンの椅子の上で器用に膝を抱えて座るおかっぱ頭と尖らせた唇が余計幼さを演出する彼女に言った。彼女が友人の部屋に駆けこんできて一時間、カップの珈琲はすっかり冷めきってしまっていて、残り数センチはどうにも口をつける気にならない。
「どうするの? チアキ、明日からまたイタリア行っちゃうんじゃないの? ほら、もう一時間経つわよ? チアキと一緒にいられるの、あと何時間? えぇと、日本語でなんて言ったかしら、モッタイナイ?」
最後はからかう様に笑ってから楽譜を閉じて、もう一度ケトルを火にかけた。棚からハーブティーの包みをいくつか取り出して彼女に促したけれど、彼女はふるふると首を振った。尋ねる様に、優しく諭されては彼女の気持ちもすっかり角が落とされてしまっていたし、それに友人も気づいていたので、いつものように仕方なく笑って「ほら、さっさと帰んなさいよ。」と言ってハーブティーよりもドア先へと促すことにした。
「ターニャ、いつもごめんなさい。」
ドアの前でギュッとスカートのすそを握り決まり悪そうに言う彼女はやっぱりどこかあどけなさが残る。
「それ、私に言うことじゃないでしょ?」
少し意地悪に笑ってやると、彼女は困ったようにはにかんで「メルシ、」と笑った。
廊下をかける彼女のスカートが揺れるのを見送って、部屋に戻るとケトルがシュンシュンと音を立てて待っていることに気づき、慌ててガスを止めたところ。もう一度来客を告げるベルが鳴る。疑問符いっぱいに思い切り顔をしかめてドアを開けた。
「あら、フランク?」
お互い何秒か顔を見合わせていたけれど、幾分か彼の方が驚いた顔。
「…何かまずかった?ターニャ、すっごい顔してドア開けるからさ。CD返しに来ただけなんだけど…」
どこか情けなく気が抜けたように息をついた。
「ううん、いつものように夫婦喧嘩の様子伺ってただけよ。入って?ちょうどお湯も沸いたし。お茶でもいれるわ。」
ショールを肩に掛けなおしてカップを用意する。封を開けるとレモングラスが馨った。
「だれか来てたの?」
テーブルに残された珈琲の飲みかけのカップ、「あぁ、」と答えようとすると、ちょうど窓の外からはピアノの音。
「のだめよ。」
「のだめ?今、ピアノ弾いてるんじゃないの?…あ、弾いてるのはチアキかな?」
「音が多いわ。二人で弾いてるんじゃない?」
「夫婦喧嘩?」
差し出されたカップを手に、窓から外を見上げる。まん丸の和音に耳を傾け彼はくつくつと可笑しそうに言った。
「いつものことよ、」
四本の腕が奏でるピアノに彼女はそっと目を閉じた。
「さっさと仲直りしてきなさいよ。どっちが悪いのか知らないけど、二人とも謝るの下手なんだから。」
友人はソファで楽譜をめくりながらキッチンの椅子の上で器用に膝を抱えて座るおかっぱ頭と尖らせた唇が余計幼さを演出する彼女に言った。彼女が友人の部屋に駆けこんできて一時間、カップの珈琲はすっかり冷めきってしまっていて、残り数センチはどうにも口をつける気にならない。
「どうするの? チアキ、明日からまたイタリア行っちゃうんじゃないの? ほら、もう一時間経つわよ? チアキと一緒にいられるの、あと何時間? えぇと、日本語でなんて言ったかしら、モッタイナイ?」
最後はからかう様に笑ってから楽譜を閉じて、もう一度ケトルを火にかけた。棚からハーブティーの包みをいくつか取り出して彼女に促したけれど、彼女はふるふると首を振った。尋ねる様に、優しく諭されては彼女の気持ちもすっかり角が落とされてしまっていたし、それに友人も気づいていたので、いつものように仕方なく笑って「ほら、さっさと帰んなさいよ。」と言ってハーブティーよりもドア先へと促すことにした。
「ターニャ、いつもごめんなさい。」
ドアの前でギュッとスカートのすそを握り決まり悪そうに言う彼女はやっぱりどこかあどけなさが残る。
「それ、私に言うことじゃないでしょ?」
少し意地悪に笑ってやると、彼女は困ったようにはにかんで「メルシ、」と笑った。
廊下をかける彼女のスカートが揺れるのを見送って、部屋に戻るとケトルがシュンシュンと音を立てて待っていることに気づき、慌ててガスを止めたところ。もう一度来客を告げるベルが鳴る。疑問符いっぱいに思い切り顔をしかめてドアを開けた。
「あら、フランク?」
お互い何秒か顔を見合わせていたけれど、幾分か彼の方が驚いた顔。
「…何かまずかった?ターニャ、すっごい顔してドア開けるからさ。CD返しに来ただけなんだけど…」
どこか情けなく気が抜けたように息をついた。
「ううん、いつものように夫婦喧嘩の様子伺ってただけよ。入って?ちょうどお湯も沸いたし。お茶でもいれるわ。」
ショールを肩に掛けなおしてカップを用意する。封を開けるとレモングラスが馨った。
「だれか来てたの?」
テーブルに残された珈琲の飲みかけのカップ、「あぁ、」と答えようとすると、ちょうど窓の外からはピアノの音。
「のだめよ。」
「のだめ?今、ピアノ弾いてるんじゃないの?…あ、弾いてるのはチアキかな?」
「音が多いわ。二人で弾いてるんじゃない?」
「夫婦喧嘩?」
差し出されたカップを手に、窓から外を見上げる。まん丸の和音に耳を傾け彼はくつくつと可笑しそうに言った。
「いつものことよ、」
四本の腕が奏でるピアノに彼女はそっと目を閉じた。
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