[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ロシアケーキ
寒いからロシアネタ(嘘です)
|ロシア祭
千秋君に誘われてアパルトマンに寄ると、テーブルには既にお茶の用意ができていた。
「先輩お帰りなさい、黒木君も!」
恵ちゃんが部屋の中で大きく手を振った。
「今日は、アンナに分けてもらったジャムでロシアケーキとロシアンティーでロシア祭ですー。ね、ターニャ。」
中央にジャムをのせて焼かれたクッキー。それをフランクが一つ手にとってふぅん、と不思議そうな表情で見ている。
「これ、ロシアケーキっていうの?」
ポットを手にしたターニャに向かって屈託なく訊ねた。ターニャはどこかムッとしている。
「知らないわよ。ロシアケーキなんて初めて聞いたわ。日本人ってどうしてそう勝手に和製外国言葉を作っちゃうの?どうせロシアは寒さを理由に糖分いっぱい摂り過ぎだって思ってるんでしょ。私が太りやすいのはそのせいだって思ってるんでしょ!」
先週二キロ太った、と言ってはいたけれど、どうやらそれをまだ引きずっているらしい。みんなはいつのまにやら話がスライドしていったことにキョトンとしてしまっていたし、僕は少し笑ってしまったけれど、まるで気に入らないと睨まれてしまったので慌ててお茶の用意を手伝った。
「それにロシアンティーも、日本人が勝手に言ってるだけだろ。」
千秋君が椅子をひいてテーブルにつきながら言ったところで、僕は恵ちゃんと顔を見合わせる。
「そうだったんですか?」
「僕も知らなかった!」
ターニャと千秋君が同じ顔をするのは恵ちゃんを前にするとよくあることで、呆れているケースの方がそれは多いのだけれど。まさか自分もそんな顔をさせてしまうとは思ってもいなかったので、何だか少しおかしな気分で笑ってしまう。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。ターニャも好きでしょ?ジャム入れて甘くした紅茶。ほら、どれくらい入れますか?もっと?」
顔をしかめたままのターニャに向かって、恵ちゃんは瓶から掬い上げたスプーン山盛りの光るジャムを差し出す。キラキラとしたルビー色の中には黒い粒や褐色が覗いていた。
「…入れすぎよ。ダイエット中だって、言ったでしょ。」
恵ちゃんのあどけなさにすっかり毒気を持っていかれてしまうこの顔も、千秋君と似ているな、と思う時がある。
テーブルの真ん中に山に盛られたロシアケーキは少し自分には甘過ぎる気もするけれど、申し分無く美味しい。そしてカップの中のジャムのせいで濃い色に落ち着いた紅茶は、ロシアンティーやロシアケーキ、果てはビーフストロガノフがロシアかフランスかだなんて話の間に湯気が大人しくなる温度になるのも早くに感じた。千秋君が二杯目の紅茶を準備している。
「先輩、のだめの、もうちょっとジャム入れて下さいよー。」
「入れすぎだろ。それにターニャより最近太ったのはお前だろ。」
スプーンを恨めしげに見つめる恵ちゃんと、意地悪く笑う千秋君。その二人のやりとりをジッと見ていたターニャがロシアケーキをつまみながら口を開いた。
「ねぇ、チアキがのだめと日本語で話してる時に「おまえ」って言うでしょ?なんで「のだめ」や「めぐみ」じゃないの?あと、のだめも「しんいち」じゃなくて「せんぱい」って言うのは何で?日本人も親しくなったら名前で呼ぶものでしょう?」
日本人が三人にフランス人とロシア人が一人ずつ。音楽の話だってロシアの話だって、今ではない普段もフランス語で話すことが殆どだけれど、日本語を話さないことも無いので、ターニャは耳にすることも多く大分耳が慣れて来たのだろう。なんてことはない素朴な疑問だ。けれどもその質問に答えられるのはきっと僕だけだろうと思っている。当の二人はいきなりの質問にぽかんとしていて、千秋君はすぐに答えを探そうとしている風だったけれど、中々答えられなさそうだった。千秋君のこの顔もよく知っている。彼を困らすには恵ちゃん関連が一番だからだ。
「えぇーと、そうだなぁ。訳するとね、千秋君の「おまえ」は「ハニー」とか「マイスウィート」で、恵ちゃんの「先輩」は「ダーリン」かなぁ。」
「…黒木君…!」
「…ほわぉ。素敵な訳ですねー!」
「成る程、それは説得力があるなぁ。」
感心した様に納得するフランクの顔、どこかしたり顔でいやらしく笑うのはターニャ。嬉しそうにやっぱり屈託なく笑う恵ちゃん。
千秋君は耳まで赤くして「違う」と言っては否定出来ない、一番珍しい顔を見せてくれた。
千秋君に誘われてアパルトマンに寄ると、テーブルには既にお茶の用意ができていた。
「先輩お帰りなさい、黒木君も!」
恵ちゃんが部屋の中で大きく手を振った。
「今日は、アンナに分けてもらったジャムでロシアケーキとロシアンティーでロシア祭ですー。ね、ターニャ。」
中央にジャムをのせて焼かれたクッキー。それをフランクが一つ手にとってふぅん、と不思議そうな表情で見ている。
「これ、ロシアケーキっていうの?」
ポットを手にしたターニャに向かって屈託なく訊ねた。ターニャはどこかムッとしている。
「知らないわよ。ロシアケーキなんて初めて聞いたわ。日本人ってどうしてそう勝手に和製外国言葉を作っちゃうの?どうせロシアは寒さを理由に糖分いっぱい摂り過ぎだって思ってるんでしょ。私が太りやすいのはそのせいだって思ってるんでしょ!」
先週二キロ太った、と言ってはいたけれど、どうやらそれをまだ引きずっているらしい。みんなはいつのまにやら話がスライドしていったことにキョトンとしてしまっていたし、僕は少し笑ってしまったけれど、まるで気に入らないと睨まれてしまったので慌ててお茶の用意を手伝った。
「それにロシアンティーも、日本人が勝手に言ってるだけだろ。」
千秋君が椅子をひいてテーブルにつきながら言ったところで、僕は恵ちゃんと顔を見合わせる。
「そうだったんですか?」
「僕も知らなかった!」
ターニャと千秋君が同じ顔をするのは恵ちゃんを前にするとよくあることで、呆れているケースの方がそれは多いのだけれど。まさか自分もそんな顔をさせてしまうとは思ってもいなかったので、何だか少しおかしな気分で笑ってしまう。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。ターニャも好きでしょ?ジャム入れて甘くした紅茶。ほら、どれくらい入れますか?もっと?」
顔をしかめたままのターニャに向かって、恵ちゃんは瓶から掬い上げたスプーン山盛りの光るジャムを差し出す。キラキラとしたルビー色の中には黒い粒や褐色が覗いていた。
「…入れすぎよ。ダイエット中だって、言ったでしょ。」
恵ちゃんのあどけなさにすっかり毒気を持っていかれてしまうこの顔も、千秋君と似ているな、と思う時がある。
テーブルの真ん中に山に盛られたロシアケーキは少し自分には甘過ぎる気もするけれど、申し分無く美味しい。そしてカップの中のジャムのせいで濃い色に落ち着いた紅茶は、ロシアンティーやロシアケーキ、果てはビーフストロガノフがロシアかフランスかだなんて話の間に湯気が大人しくなる温度になるのも早くに感じた。千秋君が二杯目の紅茶を準備している。
「先輩、のだめの、もうちょっとジャム入れて下さいよー。」
「入れすぎだろ。それにターニャより最近太ったのはお前だろ。」
スプーンを恨めしげに見つめる恵ちゃんと、意地悪く笑う千秋君。その二人のやりとりをジッと見ていたターニャがロシアケーキをつまみながら口を開いた。
「ねぇ、チアキがのだめと日本語で話してる時に「おまえ」って言うでしょ?なんで「のだめ」や「めぐみ」じゃないの?あと、のだめも「しんいち」じゃなくて「せんぱい」って言うのは何で?日本人も親しくなったら名前で呼ぶものでしょう?」
日本人が三人にフランス人とロシア人が一人ずつ。音楽の話だってロシアの話だって、今ではない普段もフランス語で話すことが殆どだけれど、日本語を話さないことも無いので、ターニャは耳にすることも多く大分耳が慣れて来たのだろう。なんてことはない素朴な疑問だ。けれどもその質問に答えられるのはきっと僕だけだろうと思っている。当の二人はいきなりの質問にぽかんとしていて、千秋君はすぐに答えを探そうとしている風だったけれど、中々答えられなさそうだった。千秋君のこの顔もよく知っている。彼を困らすには恵ちゃん関連が一番だからだ。
「えぇーと、そうだなぁ。訳するとね、千秋君の「おまえ」は「ハニー」とか「マイスウィート」で、恵ちゃんの「先輩」は「ダーリン」かなぁ。」
「…黒木君…!」
「…ほわぉ。素敵な訳ですねー!」
「成る程、それは説得力があるなぁ。」
感心した様に納得するフランクの顔、どこかしたり顔でいやらしく笑うのはターニャ。嬉しそうにやっぱり屈託なく笑う恵ちゃん。
千秋君は耳まで赤くして「違う」と言っては否定出来ない、一番珍しい顔を見せてくれた。
PR