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彼の彼女のファンタジア
コンサートでの×2

|彼の

彼女の久しぶりのソロリサイタルは眩いばかりに表情をコロコロと変える、まるで彼女そのものだと思った。アンコール、最後の一音が鍵盤の上で跳ねると替わって響く拍手と喝采。鳴り止まない拍手にはにかんだ様に笑う顔はどこかあどけなく幼さが残る。その表情は、ステージが遠い彼には確認出来なかったけれど、目蓋に焼き付いた彼女は笑っていたので思わず微笑んだ。
そこでふと、彼は違和感を覚えて隣の席を見た。名残惜しげに拍手を終えた手をひろげずに胸の前で組んだまま、席を立とうとしない真っ白な短い頭をした老人が座ったままだった。アンコールも終わり、帰宅を促すコンサートホールの明かりが灯ると大抵は余韻もそこそこに椅子をあげるが、彼はピアノが取り残されたステージを見つめたままだった。そういえば、と、休憩の間も彼は老眼鏡を片手にパンフレットを真剣に一字一字追っていたことが思い出される。そして最後の拍手をやめる際の愛惜の仕草。見つめているとその視線に気づいたのか、老人は照れたように笑った。

「テレビで見てから、楽しそうに弾く彼女のすっかりフアンになってしまってね。…最近なんだけどね。まるで今日は夢を見ている気分だった。」

恥ずかしそうに頭をかきながら目を細めると、それ以上は何も言わず、もう一度ピアノを見た。それから軽い会釈をして、老人は席を立ちホールを後にした。


楽屋のドアを開ければきっと彼女はいつもの様に飛びついてくるだろう、どんな言葉をかけてやろう。なんだか胸がいっぱいに詰まって、言葉はうまく出てきそうにはなかった。





|彼女の

「指揮者さん、こっち向かないの?」
隣に腰かけた小さな女の子は、大きなリボンの髪飾りが揺れるほど首を傾げて隣の母親らしき女性にその突拍子も無い質問を投げかけた。隣の女性は不思議そうに困ったように笑って、どうして?と聞いてやっている。
「背中ばっかり。たまにはこっち向きになればいいのに。」
少女が言うには指揮者をステージの奥に置き客席の方に向いて指揮をすればいいということだろう。母親らしき女性は余計に困った様に苦笑しているが、隣の彼女は成る程、なんて思う。

「オケはズルいです。いつだって指揮者の方を向いて千秋先輩ずっと見られて。のだめはコンチェルトで同じステージに立っても、真澄ちゃんみたいな千秋先輩の真っ正面の特等席じゃないし。」
ずっとずっと前にそんなことを言って唇を尖らせた覚えがあった。今度は少女の言うように「こっち向いて振って下さい。」なんて言ってみようか、と思うが。どうせまたしらけた顔とため息のいつものセットで返されるだろうと想像に容易い。

「それに、楽器だけに魔法をかけるなんて。もったいないでしょ?」

ね?といきなり彼女の方を見て笑う少女には八重歯が覗いていた。勿論彼女も少女と一緒ににっこりと笑って大きく頷いた。どうしよう、プログラムにはもう一曲あるのに、と、彼女は魔法使いの彼に早く早く、会いたくて堪らなくなってしまっていた。




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こちらは、の/だ/め/カン/ター/ビレを扱う二次創作のブログです。もちろん原作、出版社等いっさい関係ありません。

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