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日々に密かに
千秋がRuiに、料理が好き〜「人が」喜ぶとこ〜て言ってのだめをちゃんと想像してくれてるところが好きです。

|大小様々嬉喜交々

十字にナイフが入ったジャガイモにはバターが切れ目にそって素直に流れてゆき、ブラックペッパーとハーブが鼻腔をくすぐる。
「ほわー。幸せですー。」
彼女はしばらくハチミツ色が染み込んでいくのを眺めていたけれど、全細胞が早く早く、と訴えるのに素直に従いやや大きめの一口を焦る様に口元へ運んだ。
「のだめ、先輩のご飯食べてる時が一番幸せです…。」
テーブルでサーモンクリームのパイを切り分ける彼が目も上げないのは、彼女がどんな表情だなんて想像に容易いからだ。料理を振る舞う度の歓声、奇声、至福の表情はしっかりと彼はこころ覚えているし、どこかで料理を作る際にそれを彼自身が求めているところもあるのかもしれない。現に彼は丁寧に切り分けたパイを彼女の皿にサーヴしながら声が丸くなる程笑っている。
「昨日よりも?」
昨日のリサイタル、の余韻からは彼の方が抜けていないのかもしれない。テーブルに並べられた皿の数はいつもの1.5倍はあったし、ワインだってとっておきを躊躇うことなく開けていた。そして彼女はあっさりと笑った。
「はいー。今は断然ピアノより先輩のご飯ですー。このお芋に、スープ。マリネのほうが幸せですー。」
だらしなく伸びた語尾の後にサーモンクリームパイに突き刺したフォークのサクリという音。
「のだめは幸せ者です。」
熱そうに少し慌てて飲込んでから、フォークをくわえたまま続ける。
「先輩のご飯は美味しいし、ピアノも弾けるし、ピアノに飽きたらごろ太があるし、…ぁあ!先輩!今何時ですか!今日はケーブル放送でごろ太の劇場版の放送があるんですよー!見なきゃ!録画しなきゃー!」

全く彼女は忙しなく、彼に静かな感動や喜びをゆっくりと味わすこともなく椅子からソファに飛び移っていった。皿には無造作にフォークが投げ出されたまま。

「…」

まるで昨日のプログラムみたいに、胸を締め付ける程のモーツァルトを披露したり、奔放なショパンで振り回してみたり。呆気にとられるのはいつだって観客の方で、最後には彼女の居なくなったステージに笑いながら拍手を送ってしまっている。

「それでー? 先輩の幸せって何ですかー?」
身体だけテレビを向いてリモコンを片手に訊いた。嬉々と揺れている頭の寝ぐせのひと束を眺めながら、ポツリ「…ひみつ。」と一言だけ漏らして彼は言葉を噤んだ。聞こえなかったのか、彼女は不思議そうな顔をしている。

「ほら、メシ冷めるぞ。」
呼びかけると、素直に「はぁい」と返事をした彼女だったけれど、リモコンを離さないままいやらしく笑ってみせた。
「先輩、何笑ってるんですかー?やぁらしいー!」

彼が感嘆符とため息を作らされる羽目になっている間に、彼女はテーブルに戻って食事を早々と再開。フォークと皿がもう一度ぶつかる音、すかさず漏れる奇声。向かいには再び彼女の至福の顔だ。

それから、パイの余りでデザート用にホイップを泡立てている間だったり、彼女は思い出しては何度か「幸せ」を訊いてみたけれど、ついに教えて貰えることはなかった。その実、子供みたいに腰にまとわりついては、同じことを、ねぇ、と繰りかえし尋ねる彼女の手と声に「邪魔」なんていつもの台詞を吐き出す間でさえ、彼はずっと幸せだった。









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こちらは、の/だ/め/カン/ター/ビレを扱う二次創作のブログです。もちろん原作、出版社等いっさい関係ありません。

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