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pray・party
少し未来の。シュトレーゼマンと。
|いつかの野球拳
人、人、アルコール。機嫌良さそうな鼻歌に上機嫌に赤い顔。薄暗い室内と上品に灯った明かりの中、煙草をやめて大分経つシュトレーゼマンを気遣い彼は少し離れたテーブルで煙草を転がしていた。灰皿に吸いさしを預けて、いつものように、笑顔を絶やさないプロの女性を侍らせている向こうのテーブルをぼんやりと眺める。クラシック界に興味の無い客が店に入れば、いい歳をした外国人が上等のホステスをかしずかせだらしなく笑っているだけにしか見えないかもしれない、と思う。
「先輩?ミルヒのところ、行かなくていいんですか?」
エル字に組まれたソファは、えんじ色のビロードの皺をつるりと反射させて片側が沈んだ。
「お前こそ。今日は主役だろ?」
「もうのだめ挨拶ばっかりで疲れましたー。それに、ミルヒ。キレイなお姉さんに囲まれて楽しそうですしー。」
コンチェルトの後の盛大な打ち上げを終えた後、久々に日本のクラブに行きたい、というシュトレーゼマンを辣腕なマネージャーは表情も変えず「帰りはタクシーに押し込んでくれたらいいから、」そう言い残して早々と消えてしまった。
「まぁ、楽しそうではあるけれど。」
灰が伸びるばかりの煙草を灰皿に押し付ける。酒と音楽と女が好き、普段からそんなことばかりをおどけて言ってみせても、彼は純粋に、人と、音楽を愛している人なのだろう、と信じられてしまう。それはきっと、彼女達とは多分音楽の話なんてしていないだろうけれど、至極楽しそうな顔がなんとも言えず穏やかなことと、数時間前に聞いたブラームスのせいかもしれない。そんなことを思いながら、その音を一緒に奏でた彼女を見れば、きょとんした面持ちで横髪を揺らした。
「あ、もしかして。またミルヒとのだめがコンチェルトしたから、先輩ジェラシーで落ち込んでるんですか?それで一人離れて呑んでたり?」
もう随分と赤い顔をしてケラケラと笑いながら軽口を言う彼女の鼻先を摘んでやると、いつもの素っ頓狂な奇声を漏らした。
「のだめちゃぁーん」
「ほら、呼んでるぞ。」
嫉妬なんかであるものか、可能な限り、それこそ死ぬ迄何度だって彼らのコンチェルトが見られるというのなら、喜んでパートナーを差し出してやるのに。彼は、はぁ、と息をついた。「行けよ、ほら。」
脳内ではまだピアノが鳴っている。目を閉じれば指揮棒を振る彼の姿も映る。その光が溢れるステージを思い出せば、唇を尖らせた彼女と締まりのない名前を呼ぶ声にも抗えないと口元は緩んでしまう。
「のだめちゃーん、野球拳しましょー。」
「えぇー、前も言いましたけど別にミルヒが脱ぐの見たくないです。それにワンピースとスーツって、枚数的にずるくないですかー?」
「そんなこと言わずに、ほらほら。私が負けたら千秋が脱ぎまーす!」
「…やりましょう!」
彼は和やかに上げた口元がきちんと引きつるのが分かった。
「やるな!」
数年前と変わらないこの会話に、シュトレーゼマンはひとつ嫌な笑いを足した。
「ふぅん、千秋が脱ぎたくないから?のだめちゃんに脱いで欲しくないから?他の人に見せられなくなっちゃった?」
それは愉しそうな師匠の声に、弟子はアルコールの助けも無く急速に顔を赤くする羽目になった。
人、人、アルコール。機嫌良さそうな鼻歌に上機嫌に赤い顔。薄暗い室内と上品に灯った明かりの中、煙草をやめて大分経つシュトレーゼマンを気遣い彼は少し離れたテーブルで煙草を転がしていた。灰皿に吸いさしを預けて、いつものように、笑顔を絶やさないプロの女性を侍らせている向こうのテーブルをぼんやりと眺める。クラシック界に興味の無い客が店に入れば、いい歳をした外国人が上等のホステスをかしずかせだらしなく笑っているだけにしか見えないかもしれない、と思う。
「先輩?ミルヒのところ、行かなくていいんですか?」
エル字に組まれたソファは、えんじ色のビロードの皺をつるりと反射させて片側が沈んだ。
「お前こそ。今日は主役だろ?」
「もうのだめ挨拶ばっかりで疲れましたー。それに、ミルヒ。キレイなお姉さんに囲まれて楽しそうですしー。」
コンチェルトの後の盛大な打ち上げを終えた後、久々に日本のクラブに行きたい、というシュトレーゼマンを辣腕なマネージャーは表情も変えず「帰りはタクシーに押し込んでくれたらいいから、」そう言い残して早々と消えてしまった。
「まぁ、楽しそうではあるけれど。」
灰が伸びるばかりの煙草を灰皿に押し付ける。酒と音楽と女が好き、普段からそんなことばかりをおどけて言ってみせても、彼は純粋に、人と、音楽を愛している人なのだろう、と信じられてしまう。それはきっと、彼女達とは多分音楽の話なんてしていないだろうけれど、至極楽しそうな顔がなんとも言えず穏やかなことと、数時間前に聞いたブラームスのせいかもしれない。そんなことを思いながら、その音を一緒に奏でた彼女を見れば、きょとんした面持ちで横髪を揺らした。
「あ、もしかして。またミルヒとのだめがコンチェルトしたから、先輩ジェラシーで落ち込んでるんですか?それで一人離れて呑んでたり?」
もう随分と赤い顔をしてケラケラと笑いながら軽口を言う彼女の鼻先を摘んでやると、いつもの素っ頓狂な奇声を漏らした。
「のだめちゃぁーん」
「ほら、呼んでるぞ。」
嫉妬なんかであるものか、可能な限り、それこそ死ぬ迄何度だって彼らのコンチェルトが見られるというのなら、喜んでパートナーを差し出してやるのに。彼は、はぁ、と息をついた。「行けよ、ほら。」
脳内ではまだピアノが鳴っている。目を閉じれば指揮棒を振る彼の姿も映る。その光が溢れるステージを思い出せば、唇を尖らせた彼女と締まりのない名前を呼ぶ声にも抗えないと口元は緩んでしまう。
「のだめちゃーん、野球拳しましょー。」
「えぇー、前も言いましたけど別にミルヒが脱ぐの見たくないです。それにワンピースとスーツって、枚数的にずるくないですかー?」
「そんなこと言わずに、ほらほら。私が負けたら千秋が脱ぎまーす!」
「…やりましょう!」
彼は和やかに上げた口元がきちんと引きつるのが分かった。
「やるな!」
数年前と変わらないこの会話に、シュトレーゼマンはひとつ嫌な笑いを足した。
「ふぅん、千秋が脱ぎたくないから?のだめちゃんに脱いで欲しくないから?他の人に見せられなくなっちゃった?」
それは愉しそうな師匠の声に、弟子はアルコールの助けも無く急速に顔を赤くする羽目になった。
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