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原点ツアー
少し未来の。
|原点ツアー
「今日はのだめの、」
続いた彼女の言葉に、彼は眉間に皺を寄せて、訝しみながら返答した。
「またお前は…。大体ツアーじゃないだろ。」
最初のソロリサイタルも変なタイトルつけやがって。大体峰の言うことを真に受けるやつがどこにいるんだ。彼は控え室でパイプ椅子に腰をかけて、鏡に向う彼女とテーブルに置かれた公演チケットを交互に見ながら、ぶつぶつと続けた。しかし、公演チケットには今日の公演場所の彼らの母校の大学名と彼女の名前だけで、リサイタル名などは書かれていない。
「ただの学園祭に呼ばれた、ってだけじゃないんですよー。ここは、のだめとピアノと、先輩との愛の原点じゃないですか!だからそれが、今日のリサイタルタイトルです!」
「…なんだよ、それ。」
鏡越しに彼を見つめて、興奮した様子で得意げに言う彼女に、彼は呆れた様に返した。少し照れたような面持ち。それを見透かした様に、余計に笑顔を付け足した彼女に、彼は小さくムッとした表情をみせて腰をあげた。鏡の前まで行き後ろから彼女の頭をぐしゃりと掻き回した。わ、と困った声をあげる彼女は両手でそれを遮ろうとしたが、頭の上で優しく止まった彼の手と重なった。不思議そうに鏡越しに彼を見れば、目を伏せて、髪を梳く様に今度はゆっくりと撫でている。それから、まるで儀式の様につむじに唇を落とした。
頑張れ、という声がてっぺんから震えて響いた。
客席に戻った彼の隣では、友人がチケットを見ながら不満そうな顔をしていた。
「今度は何て吹き込んだんだよ。」
疑問符を浮かべて怪訝そうな顔をした友人に彼は続けた。
「このリサイタルのタイトルだよ。どうせお前がまた何か言ったんだろ。」
あぁ、と納得した表情から少し不貞腐れたような顔へと変わる。
「別に。オレは色々提案したけど、のだめは先輩に怒られるって言うし。それに、のだめは何かつけたいタイトルないのか?って聞いたら、笑うだけで、教えてくれなかったし。」
隣を見れば少し間の抜けた彼の顔。
「千秋、教えてもらったんだろ?」
照明が落ちて彼の顔色は見えなかったけれど、会場のブザーの音に追いかけられた彼の「別に。」と答えた声色に、友人は悟った様に苦笑していた。
終演後の打ち上げの中で彼女がこっそり彼のジャケットの裾を引いた。そうして抜け出した彼らは、かつての通学路を歩いていた。どこへ行く、と言わなくても、二人は同じ方向へと向っていた。足を止めた彼女は、ふふ、と小さく笑って彼を見上げる。彼も一度小さく笑う。
「先輩の部屋、電気点いてますね。」
「お前の部屋も、電気点いてる。」
「誰か、ピアノ弾いてますね。」
「お前みたいだな。夜遅いのに、窓開けて弾いて。苦情来るぞ。」
「よく先輩に怒られてましたね。」
かつてのアパートを懐かしむ様に見上げて、彼の肩にゆっくりと彼女は頭を預けた。二人指を絡めあって、小さく聞こえるピアノの音を辿る。
「原点ツアー、…でしょ?」
口を尖らせて、少し得意げに笑って見上げた彼女
「で、これから大川まで行くの?」
彼もいたずらっぽく笑って返せば、「それもいいですね、」と彼女はおかしそうに笑った。
「帰ろう。」
キュッと絡めた指に合図を送った。
「どこにですか?」
「パリ。」
耳元でそう言って、ついでにこめかみにキスをすれば彼女はくすぐったそうに笑った。少し顔を上げた彼女と唇を重ねる。
「三善のアパルトマン、オルセー、サンマロ…パリでもやりましょ?原点ツアー。」
嬉しそうに笑いながら提案する彼女に、仕方ないといった返事の代わりに彼は繋いだ手をギュッと握り返した。
「今日はのだめの、」
続いた彼女の言葉に、彼は眉間に皺を寄せて、訝しみながら返答した。
「またお前は…。大体ツアーじゃないだろ。」
最初のソロリサイタルも変なタイトルつけやがって。大体峰の言うことを真に受けるやつがどこにいるんだ。彼は控え室でパイプ椅子に腰をかけて、鏡に向う彼女とテーブルに置かれた公演チケットを交互に見ながら、ぶつぶつと続けた。しかし、公演チケットには今日の公演場所の彼らの母校の大学名と彼女の名前だけで、リサイタル名などは書かれていない。
「ただの学園祭に呼ばれた、ってだけじゃないんですよー。ここは、のだめとピアノと、先輩との愛の原点じゃないですか!だからそれが、今日のリサイタルタイトルです!」
「…なんだよ、それ。」
鏡越しに彼を見つめて、興奮した様子で得意げに言う彼女に、彼は呆れた様に返した。少し照れたような面持ち。それを見透かした様に、余計に笑顔を付け足した彼女に、彼は小さくムッとした表情をみせて腰をあげた。鏡の前まで行き後ろから彼女の頭をぐしゃりと掻き回した。わ、と困った声をあげる彼女は両手でそれを遮ろうとしたが、頭の上で優しく止まった彼の手と重なった。不思議そうに鏡越しに彼を見れば、目を伏せて、髪を梳く様に今度はゆっくりと撫でている。それから、まるで儀式の様につむじに唇を落とした。
頑張れ、という声がてっぺんから震えて響いた。
客席に戻った彼の隣では、友人がチケットを見ながら不満そうな顔をしていた。
「今度は何て吹き込んだんだよ。」
疑問符を浮かべて怪訝そうな顔をした友人に彼は続けた。
「このリサイタルのタイトルだよ。どうせお前がまた何か言ったんだろ。」
あぁ、と納得した表情から少し不貞腐れたような顔へと変わる。
「別に。オレは色々提案したけど、のだめは先輩に怒られるって言うし。それに、のだめは何かつけたいタイトルないのか?って聞いたら、笑うだけで、教えてくれなかったし。」
隣を見れば少し間の抜けた彼の顔。
「千秋、教えてもらったんだろ?」
照明が落ちて彼の顔色は見えなかったけれど、会場のブザーの音に追いかけられた彼の「別に。」と答えた声色に、友人は悟った様に苦笑していた。
終演後の打ち上げの中で彼女がこっそり彼のジャケットの裾を引いた。そうして抜け出した彼らは、かつての通学路を歩いていた。どこへ行く、と言わなくても、二人は同じ方向へと向っていた。足を止めた彼女は、ふふ、と小さく笑って彼を見上げる。彼も一度小さく笑う。
「先輩の部屋、電気点いてますね。」
「お前の部屋も、電気点いてる。」
「誰か、ピアノ弾いてますね。」
「お前みたいだな。夜遅いのに、窓開けて弾いて。苦情来るぞ。」
「よく先輩に怒られてましたね。」
かつてのアパートを懐かしむ様に見上げて、彼の肩にゆっくりと彼女は頭を預けた。二人指を絡めあって、小さく聞こえるピアノの音を辿る。
「原点ツアー、…でしょ?」
口を尖らせて、少し得意げに笑って見上げた彼女
「で、これから大川まで行くの?」
彼もいたずらっぽく笑って返せば、「それもいいですね、」と彼女はおかしそうに笑った。
「帰ろう。」
キュッと絡めた指に合図を送った。
「どこにですか?」
「パリ。」
耳元でそう言って、ついでにこめかみにキスをすれば彼女はくすぐったそうに笑った。少し顔を上げた彼女と唇を重ねる。
「三善のアパルトマン、オルセー、サンマロ…パリでもやりましょ?原点ツアー。」
嬉しそうに笑いながら提案する彼女に、仕方ないといった返事の代わりに彼は繋いだ手をギュッと握り返した。
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