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忘れもの
朝を一緒に摂るというのはどこまでも健やかで
清々しくて私は大好きな光景です。
清々しくて私は大好きな光景です。
|忘れもの
テーブルで揃って朝食をとっているところ、彼はふと見上げた壁の時計の針を見て「あ、」と声を上げた。それからすぐに慌ててカップの珈琲を飲み干しながら椅子から立ち上がり食器を下げる。
「先輩?」
「今日、テオから早めに事務所にって言われてたんだった。」
「遅刻ですか?」
「いや、まぁ間に合うだろうけど。」
ソファの背にかかったジャケットを肩に預けながら、ドアに向う革靴の足音と一緒に「それじゃぁ、先に出る。」と言葉を部屋に残した。
「はぁい」
トーストを齧りながら彼女は「行ってらっしゃい」と口の中で返事を続けた。
彼が慌ただしく部屋を出て行ってから、およそ五分。アパルトマンの階段を上る足音に気づいた彼女はカップのカフェオレを飲み終える頃。
「先輩? どうしたんですか?」
部屋のドアが開いて彼のジャケットの裾が覗いた、と思えばすぐにデスクに向かいデスク上の書類を探している様子の彼に声をかけた。
「あー、忘れもの。」
「のだめですか?」
探す手を丁寧にも一度止めて、彼女をひと睨みしてから「違う。」と否定した。その様子に彼女はけらけらと小さく笑った。
書類を手に再びドアに向う彼の背中を、リビングからルームシューズをパタパタと足音を立てて彼女が追ってくる。「じゃぁ、」行ってきます、と続けようと振り返った彼の目に映るのは、寝癖の残る髪を揺らして笑う彼女の口元。彼は小さく吹き出して「パン屑。」と親指で拭ってやった。その手のついでで彼女を頭からぐっと引き寄せる。
「行ってきます。」
そう言って、可愛らしい音を立てて唇を掠めとる。きっと照れた表情をしているに違いないだろうと彼女が確認する間もなく、彼はドアをやや大きな音を立てて出て行った。ドアの向こうでは彼女の予想通り、少し頬を赤らめた彼が「これで完璧遅刻だな。」と零していた。
残された彼女は、くすりと一つ笑った。
「忘れもの、やっぱりのだめだったんじゃないですか。」
テーブルで揃って朝食をとっているところ、彼はふと見上げた壁の時計の針を見て「あ、」と声を上げた。それからすぐに慌ててカップの珈琲を飲み干しながら椅子から立ち上がり食器を下げる。
「先輩?」
「今日、テオから早めに事務所にって言われてたんだった。」
「遅刻ですか?」
「いや、まぁ間に合うだろうけど。」
ソファの背にかかったジャケットを肩に預けながら、ドアに向う革靴の足音と一緒に「それじゃぁ、先に出る。」と言葉を部屋に残した。
「はぁい」
トーストを齧りながら彼女は「行ってらっしゃい」と口の中で返事を続けた。
彼が慌ただしく部屋を出て行ってから、およそ五分。アパルトマンの階段を上る足音に気づいた彼女はカップのカフェオレを飲み終える頃。
「先輩? どうしたんですか?」
部屋のドアが開いて彼のジャケットの裾が覗いた、と思えばすぐにデスクに向かいデスク上の書類を探している様子の彼に声をかけた。
「あー、忘れもの。」
「のだめですか?」
探す手を丁寧にも一度止めて、彼女をひと睨みしてから「違う。」と否定した。その様子に彼女はけらけらと小さく笑った。
書類を手に再びドアに向う彼の背中を、リビングからルームシューズをパタパタと足音を立てて彼女が追ってくる。「じゃぁ、」行ってきます、と続けようと振り返った彼の目に映るのは、寝癖の残る髪を揺らして笑う彼女の口元。彼は小さく吹き出して「パン屑。」と親指で拭ってやった。その手のついでで彼女を頭からぐっと引き寄せる。
「行ってきます。」
そう言って、可愛らしい音を立てて唇を掠めとる。きっと照れた表情をしているに違いないだろうと彼女が確認する間もなく、彼はドアをやや大きな音を立てて出て行った。ドアの向こうでは彼女の予想通り、少し頬を赤らめた彼が「これで完璧遅刻だな。」と零していた。
残された彼女は、くすりと一つ笑った。
「忘れもの、やっぱりのだめだったんじゃないですか。」
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