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夏の子ども
今日は早く寝る!と朝から決めていたのに持ち帰り仕事…
なのでひとつお話を上げました。
明日も笑顔で出社します!
なのでひとつお話を上げました。
明日も笑顔で出社します!
|夏の子ども
アンナから分けてもらった自家製のリモンチェロをソーダ水で割ったグラスはたっぷりと氷を入れたのだけれど、カラコロと音を立てて形を変えて溶けてゆき、グラスを薄めるばかりだったし、扇風機は生ぬるい風を送るだけだった。茹だる様な暑さとはよく言ったものだ、と思う。彼女を見ればまるで湯気がのぼっている様にぼんやりとした目と少し上気した頬をしている。
「お前、子供みたい。」
テーブルに片腕を投げ出して頭を預け、シミを作り始めたグラスの周りの水滴を、指でだらしなく遊ぶ彼女を見て、片眉をあげてシニカルに笑って言った。彼女の額はじっとりと汗で湿って前髪とサイドの髪がへばりついていて、夏の子どものようだった。
「はい?」
いつもの様に奇声をあげて反論する気も起きないのか、顔を少し上げただけでうつろな返事をした。彼は手を伸ばして笑いながら額の横髪を撫で付ける様に払ってやった。すると彼女は、むくりと顔を上げて仏頂面をきちんと彼に一度見せてから言った。
「先輩は、いつ見ても涼しげな顔ですよ。今、サーモグラフィで先輩とのだめを見たら、見事にのだめは真っ赤で、先輩なんて真っ青ですね。きっと心が冷たいんですね。」
子供みたいと言われたことに対してではなく、暑さに対する苛立ちの様だったが、最後は顔をしかめたままゆっくりと目を閉じて頭ごとテーブルにゴトリと落ちた。そんな彼女を見慣れた様に暫し目をやってから、彼は飲み干したグラスを手に立ち上がる。シンクに向かおうと思ったが、思いついたように彼女を見下ろした。気配に気づいた彼女が訝しんで顔をあげたのと同時、グラスから氷をひとつ抜き取った彼はやや広めに開いたワンピースから背中に滑らせた。
「ムッキャー!何するんですか!びっくりするじゃないですか!」
「あー、暑いんだろ?ちょっとは涼しくなるかな?と思って。」
椅子から勢いよく立ちあがり、氷を払おうと体を振ってみせたが、小さな氷は肌を滑る内に溶けてしまっただろうと、彼はしたり顔でこっそり笑った。
「取ってやるよ」
背後に回ってワンピースのファスナーを下ろすのは体のいい文句で、それに気付いた彼女が今度は仕方なさそうに笑った。苛立は、氷と一緒に溶けてしまったことも分かっている。
「先輩?」
「うん?」
振り向けば、汗の浮いた額をもう一度前髪を分ける様に指で撫でられる。
「のだめ、先輩も子供みたいに汗かいちゃう時、知ってますよ。」
まだ涼しげな彼の顔をいたずらっぽく笑って見上げ、同じ様に額をなぞる。
「うん。」
ひとつになれば、サーモグラフィは二人ともきっと真っ赤。真夏の子どもは、それは無邪気に汗をかいてたくさん笑う。
アンナから分けてもらった自家製のリモンチェロをソーダ水で割ったグラスはたっぷりと氷を入れたのだけれど、カラコロと音を立てて形を変えて溶けてゆき、グラスを薄めるばかりだったし、扇風機は生ぬるい風を送るだけだった。茹だる様な暑さとはよく言ったものだ、と思う。彼女を見ればまるで湯気がのぼっている様にぼんやりとした目と少し上気した頬をしている。
「お前、子供みたい。」
テーブルに片腕を投げ出して頭を預け、シミを作り始めたグラスの周りの水滴を、指でだらしなく遊ぶ彼女を見て、片眉をあげてシニカルに笑って言った。彼女の額はじっとりと汗で湿って前髪とサイドの髪がへばりついていて、夏の子どものようだった。
「はい?」
いつもの様に奇声をあげて反論する気も起きないのか、顔を少し上げただけでうつろな返事をした。彼は手を伸ばして笑いながら額の横髪を撫で付ける様に払ってやった。すると彼女は、むくりと顔を上げて仏頂面をきちんと彼に一度見せてから言った。
「先輩は、いつ見ても涼しげな顔ですよ。今、サーモグラフィで先輩とのだめを見たら、見事にのだめは真っ赤で、先輩なんて真っ青ですね。きっと心が冷たいんですね。」
子供みたいと言われたことに対してではなく、暑さに対する苛立ちの様だったが、最後は顔をしかめたままゆっくりと目を閉じて頭ごとテーブルにゴトリと落ちた。そんな彼女を見慣れた様に暫し目をやってから、彼は飲み干したグラスを手に立ち上がる。シンクに向かおうと思ったが、思いついたように彼女を見下ろした。気配に気づいた彼女が訝しんで顔をあげたのと同時、グラスから氷をひとつ抜き取った彼はやや広めに開いたワンピースから背中に滑らせた。
「ムッキャー!何するんですか!びっくりするじゃないですか!」
「あー、暑いんだろ?ちょっとは涼しくなるかな?と思って。」
椅子から勢いよく立ちあがり、氷を払おうと体を振ってみせたが、小さな氷は肌を滑る内に溶けてしまっただろうと、彼はしたり顔でこっそり笑った。
「取ってやるよ」
背後に回ってワンピースのファスナーを下ろすのは体のいい文句で、それに気付いた彼女が今度は仕方なさそうに笑った。苛立は、氷と一緒に溶けてしまったことも分かっている。
「先輩?」
「うん?」
振り向けば、汗の浮いた額をもう一度前髪を分ける様に指で撫でられる。
「のだめ、先輩も子供みたいに汗かいちゃう時、知ってますよ。」
まだ涼しげな彼の顔をいたずらっぽく笑って見上げ、同じ様に額をなぞる。
「うん。」
ひとつになれば、サーモグラフィは二人ともきっと真っ赤。真夏の子どもは、それは無邪気に汗をかいてたくさん笑う。
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