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【教育】きょう-いく
辞書の通りです。
|やればできる子
エントランスに彼の車が止まっていることに気づいたアパルトマンの住人は、階上の彼女の部屋を見上げ安心するように目を細めた。随分長いこと会っていないみたいだったし、食事を提供しに訪問した際には、荒んだ部屋と冷蔵庫を目にしていたので、これでもう大丈夫、と安堵した。ドアを開けた彼に飛びつく彼女、熱い抱擁と降り注ぐキスの嵐。それから、穏やかなピアノ。その彼らの幸せな想像は、しかしたやすく怒気を帯びた日本語が響き渡ることで打ち破られる。
ドアを開けるなり、彼に飛びつく彼女までは想像通りだが、ダイヴの途中で頭ごと押さえつけられた。それから部屋を見渡してその散乱具合に瞬く間に大きな落雷が一つ。
大方の説教を終えた彼が、かろうじてのスペースをソファに見出しぼすりと大きな音を立てて腰をおろした。その横でつまらなさそうに唇を尖らせた彼女も、負けじと大袈裟な音を立てて、無理やり脱ぎ散らかした衣服と彼の間に座った。そして目を三角にして、髪を振り上げて彼の方を向いた。
「先輩は、褒めて伸ばすってことを知らないんですか!いっつもあぁしろこうしろ、これはダメあれもダメ。のだめは叱られて伸びる子じゃないんです!もっと優しくしてください!せっかく久しぶりに会えて嬉しいのに、開口一番お説教なんて!」
最後はめいっぱい頬を膨らませて、ぷいと顔を背けた彼女を一瞥してから、彼は不愉快きわまりなく静かに目を閉じた。
「…百歩譲って、ピアノの指導でそれを気に留めるとしてもだな、お前のこの部屋を見てどこをどう褒めて伸ばせって言うんだよ!?優しくしろだと?散らかすな!風呂入れ!って当たり前のこと言ってるだけだろ!」
「のだめお風呂入りましたもん!」
間髪いれずにムキになって言い返す彼女はさらに頬をふくらましてみせた。ひょんな風呂宣誓に彼は肘掛から腕を落とすほどに、すっかり毒気を抜かれてしまった。思えば彼女のダイヴを途中で封じたため、恒例の彼女の充電タイムが与えられなかったことは同じくして彼にも彼女の清潔を確認する時間がなかったということだ。昔に比べれば、彼女がきちんといい匂でいることも知っているから、風呂の例えは無かったかな、とちらりと思う。けれども、まるで子供の様に当たり前を褒めろと催促することもあどけなく思えて仕方なかったので、毒気を抜かれたついでに息を吐いて笑った。その様子に、彼女はまだ面白くなさそうにむくれてみせている。
耳に小さく「おいで、」と届いてすぐに、腕ごと引っ張られて胸に落ちる。髪にさしこまれた手が優しく頭を撫ぜたのを合図に待ちかねた充電タイムが与えられた。奇声が無いのでまだつむじを曲げたまま、だけれどもちゃっかり大きく息を吸い込む様子の彼女の上で彼がくつくつと笑った。
「いい匂い、するよ。」
「…もっと褒めてください。」
「偉い偉い。オレと久々に会えるから嬉しくて風呂入って準備万端で待ってたんだろ。えらい、えらい。」
頭を撫でる手つきと一緒に、ワンピースの裾から差し入れた手で脚を撫でながら送られた抑揚のない賛辞に、ついと彼女は赤い顔をあげた。そんなつもりじゃ、と言いかけた唇はおもむろに塞がれる。
「違うの?」
溶けそうな笑顔と間違いなく優しい声色を前に、全ての言葉は噤まれてしまった。
ようやくの熱い抱擁と降り注ぐキスの嵐。それから、随分経って、穏やかなピアノ。
エントランスに彼の車が止まっていることに気づいたアパルトマンの住人は、階上の彼女の部屋を見上げ安心するように目を細めた。随分長いこと会っていないみたいだったし、食事を提供しに訪問した際には、荒んだ部屋と冷蔵庫を目にしていたので、これでもう大丈夫、と安堵した。ドアを開けた彼に飛びつく彼女、熱い抱擁と降り注ぐキスの嵐。それから、穏やかなピアノ。その彼らの幸せな想像は、しかしたやすく怒気を帯びた日本語が響き渡ることで打ち破られる。
ドアを開けるなり、彼に飛びつく彼女までは想像通りだが、ダイヴの途中で頭ごと押さえつけられた。それから部屋を見渡してその散乱具合に瞬く間に大きな落雷が一つ。
大方の説教を終えた彼が、かろうじてのスペースをソファに見出しぼすりと大きな音を立てて腰をおろした。その横でつまらなさそうに唇を尖らせた彼女も、負けじと大袈裟な音を立てて、無理やり脱ぎ散らかした衣服と彼の間に座った。そして目を三角にして、髪を振り上げて彼の方を向いた。
「先輩は、褒めて伸ばすってことを知らないんですか!いっつもあぁしろこうしろ、これはダメあれもダメ。のだめは叱られて伸びる子じゃないんです!もっと優しくしてください!せっかく久しぶりに会えて嬉しいのに、開口一番お説教なんて!」
最後はめいっぱい頬を膨らませて、ぷいと顔を背けた彼女を一瞥してから、彼は不愉快きわまりなく静かに目を閉じた。
「…百歩譲って、ピアノの指導でそれを気に留めるとしてもだな、お前のこの部屋を見てどこをどう褒めて伸ばせって言うんだよ!?優しくしろだと?散らかすな!風呂入れ!って当たり前のこと言ってるだけだろ!」
「のだめお風呂入りましたもん!」
間髪いれずにムキになって言い返す彼女はさらに頬をふくらましてみせた。ひょんな風呂宣誓に彼は肘掛から腕を落とすほどに、すっかり毒気を抜かれてしまった。思えば彼女のダイヴを途中で封じたため、恒例の彼女の充電タイムが与えられなかったことは同じくして彼にも彼女の清潔を確認する時間がなかったということだ。昔に比べれば、彼女がきちんといい匂でいることも知っているから、風呂の例えは無かったかな、とちらりと思う。けれども、まるで子供の様に当たり前を褒めろと催促することもあどけなく思えて仕方なかったので、毒気を抜かれたついでに息を吐いて笑った。その様子に、彼女はまだ面白くなさそうにむくれてみせている。
耳に小さく「おいで、」と届いてすぐに、腕ごと引っ張られて胸に落ちる。髪にさしこまれた手が優しく頭を撫ぜたのを合図に待ちかねた充電タイムが与えられた。奇声が無いのでまだつむじを曲げたまま、だけれどもちゃっかり大きく息を吸い込む様子の彼女の上で彼がくつくつと笑った。
「いい匂い、するよ。」
「…もっと褒めてください。」
「偉い偉い。オレと久々に会えるから嬉しくて風呂入って準備万端で待ってたんだろ。えらい、えらい。」
頭を撫でる手つきと一緒に、ワンピースの裾から差し入れた手で脚を撫でながら送られた抑揚のない賛辞に、ついと彼女は赤い顔をあげた。そんなつもりじゃ、と言いかけた唇はおもむろに塞がれる。
「違うの?」
溶けそうな笑顔と間違いなく優しい声色を前に、全ての言葉は噤まれてしまった。
ようやくの熱い抱擁と降り注ぐキスの嵐。それから、随分経って、穏やかなピアノ。
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