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metro
完璧な風景は大抵モノクローム
|metro
コトリ、と頭が肩に落ちたことで、彼女が眠っているのだと気がついた。手にしていた楽譜はまるで風が吹いているようにぱらぱらと一枚一枚閉じられて膝の上。肩に預けられた頭に目をやればこちらもまるで風に吹かれているように、いつものように癖のついた髪はどこかしらヒュンと揺れている。灰色に明るいメトロの中で、緩やかに呼吸を続ける彼女の胸元の律動がどこまでもあたたかで、柔らかな匂いのする頭にそっと自らも頭を預けて目を閉じた。気づかれてはならない、とそれはもう当たり前の癖の様にそっと彼女の空気を吸い込む。後ろに座った子供と母親やドア脇に立っている恋人たち、彼らの弾む声、誰かが読んでいる本のページを捲る音、そしてメトロの揺れる音と彼女の寝息。すべてが完璧に思えてこのまま目が開かなくてもかまわない、とそんな思いが一瞬よぎる。
静かに目をあけると、膝の上には彼女の左手。まるで鍵盤の上にそっと乗せられているようだ。その手はたまにどうしようもなく神聖に見えてしまう時がある、触れられないくらい。けれども同じくして自分のものにしておきたい、とも思ってしまっている。駅に着いて、ドアが開く。その頼りなくも神聖な彼女の手を取って立ち上がった。目を覚ました彼女は、膝から楽譜を落としそうになって小さく狼狽する様子を見せてから、楽譜を抱えスカートを整えて立ち上がり「眠っちゃいました。」とあどけなく笑って見せた。
メトロを降りて地上へと上がっても、雲の厚いパリの空は車輌の中と同じ灰色で目が眩いそうになる。つないだままの手を彼女は不審がって、こちらを見上げた。
「先輩、泣いてたんですか?」
目じりを指差して、不思議そうにこちらを見上げた彼女の瞳は、何も揺らがない。
「オレも、少し寝てた。」
優しくはぐらかしてやれば、彼女がまたひとつ無邪気に笑ったので。余計に胸は苦しくなるばかりだった。
コトリ、と頭が肩に落ちたことで、彼女が眠っているのだと気がついた。手にしていた楽譜はまるで風が吹いているようにぱらぱらと一枚一枚閉じられて膝の上。肩に預けられた頭に目をやればこちらもまるで風に吹かれているように、いつものように癖のついた髪はどこかしらヒュンと揺れている。灰色に明るいメトロの中で、緩やかに呼吸を続ける彼女の胸元の律動がどこまでもあたたかで、柔らかな匂いのする頭にそっと自らも頭を預けて目を閉じた。気づかれてはならない、とそれはもう当たり前の癖の様にそっと彼女の空気を吸い込む。後ろに座った子供と母親やドア脇に立っている恋人たち、彼らの弾む声、誰かが読んでいる本のページを捲る音、そしてメトロの揺れる音と彼女の寝息。すべてが完璧に思えてこのまま目が開かなくてもかまわない、とそんな思いが一瞬よぎる。
静かに目をあけると、膝の上には彼女の左手。まるで鍵盤の上にそっと乗せられているようだ。その手はたまにどうしようもなく神聖に見えてしまう時がある、触れられないくらい。けれども同じくして自分のものにしておきたい、とも思ってしまっている。駅に着いて、ドアが開く。その頼りなくも神聖な彼女の手を取って立ち上がった。目を覚ました彼女は、膝から楽譜を落としそうになって小さく狼狽する様子を見せてから、楽譜を抱えスカートを整えて立ち上がり「眠っちゃいました。」とあどけなく笑って見せた。
メトロを降りて地上へと上がっても、雲の厚いパリの空は車輌の中と同じ灰色で目が眩いそうになる。つないだままの手を彼女は不審がって、こちらを見上げた。
「先輩、泣いてたんですか?」
目じりを指差して、不思議そうにこちらを見上げた彼女の瞳は、何も揺らがない。
「オレも、少し寝てた。」
優しくはぐらかしてやれば、彼女がまたひとつ無邪気に笑ったので。余計に胸は苦しくなるばかりだった。
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