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エデンの夢
よくある質問で困る質問。

|エデンの夢

古雑誌を束ねていた手が止まる。視界に入ってきたのは揺れるワンピースの裾。顔を上げると彼女が後ろに手を組んで覗き込む様に、少し首を傾げて言った。

「無人島に一つだけ、持って行くとしたら。先輩なら何を持って行きます?」

唐突な質問だったが、疑問符に条件反射に答えを探そうとする。しかし与えられた言葉から、連想するのは海に浮かぶ小島が一つ。海?と、思い切り不機嫌を露にすれば、つられて彼女も顔を顰めた。
「例えばですよー。別に無人島じゃなくても宇宙でもいいんです。」
「一つだけ?」
「一つだけです。」
「一つだけ、ねぇ…。」
麻紐を十字にかける、雑誌をまとめて向きを直せば、指の腹を擦る感触。切ったかな、と指を見ればそうでもない、が、手を眺めたままで思考の淵を漂う。「先輩?」頭の上からは怪訝そうな彼女の声。見上げれば、首を少し傾いで横髪を揺らし目を瞬かせて答えを待っている。ひとつ、息を吐いてから古雑誌の束を抱えて立ち上がる。右手で彼女の頭を少し強めに撫ぜてやった。
「わ、、」
「お前だよ。」
「、、え?」
手を止めれば、ぴたり、と彼女も動きを止めて、目だけで見上げられる。目が合って、そのまま彼女の口の端がゆっくりとあがっていて、満面の笑みを作るまでにはそう時間はかからなかった。それからいつもの奇声とともに飛びつかれる羽目になるので、抱えた雑誌の束を手元から落としてしまった。床に落ちて割と大きな音がしてしまったが、彼女は一向に気にする様子も無くぎゅうと力を込めた。
「あぁ、もう。雑誌がバラバラになっただろ。」
窘めてから、頭を撫ぜる手の延長で彼女を引き剥がし、屈んで雑誌を拾いまとめようとする。その背中にまた彼女は覆い被さる様に抱きついてきて、首元には腕を巻きつかせた。
「先輩大好きです! …でも、答えが出るまで随分時間がかかりましたね?」
ほんの少し不服そうに、唇を尖らせて背中で言った。
「お前だって言ってやったのに贅沢言うな。」
「そうですけどー。何と悩んでたんです?二つだったらもう一個は?」
この体勢ならどうせ紐をかける作業は難しい、と片付けを諦め雑誌をまとめた手を止める。それから体の前で組まれた彼女の手を取った。
「ピアノ。」
絡めた指を少し遊ばせてぎゅっと握ってやると、顔を寄せるようにして、息だけで笑った。
「先輩のことだから、指揮棒かな、なんて。」
「指揮棒持ってても、オケがいないし。楽譜も考えてみたけど、一曲なんて選べないし。ピアノ持って行ってオレが弾いてもいいんだけど。まぁ、やっぱり。お前のピアノかなぁ、って思ったんだけど。でも、一つだけなんだろ?」
爪を撫でたり、握ったり。二人の手で遊びながら言葉を続けている間、彼女は一度、頬に唇を寄せた。
「じゃぁ、のだめがピアノを持って行きますから。先輩はのだめを持っていってくださいね?」
首を傾げて、一等可愛い顔をして提案をして、今度は唇にキスをする。柔らかく、少し長めに合わせた唇を離して、握ったままの手をそのまま前に引っ張って、彼女を落とさない様に勢いづけて立ち上がった。背中では驚いた様に小さな奇声。
「落ちるなよ。」
「先輩ー?どこ行くんですか?」
前に放り出された足を捕まえて、そのまま彼女を背負って寝室のドアを開ける。

「無人島。」

そう言ってやって、優しく笑って少し乱暴にベッドに落とす。「痛い」と笑った彼女を組敷いて、シーツの波間を二人、泳いだ。

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こちらは、の/だ/め/カン/ター/ビレを扱う二次創作のブログです。もちろん原作、出版社等いっさい関係ありません。

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