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ハナレバナレ
この広告どうにかなるのかな。
|寂しさ半分こ
着信音とディスプレイに浮かぶ文字に心がわずかに跳ねた気がしたけれど、彼は努めて平然とコールボタンで受けた。
「アロー!のだめです!」
「声でかい。着信見ればわかるから、何?」
二週間ほど離れることはよくあることだったが、九時間の時差を考えれば珍しい電話だ、と時計を見上げて思う。
「冷たい夫ですね。単身赴任中の夫が寂しくないように妻がラブコールしてるっていうのに。」
「夫でも妻でも単身赴任でもないし。明後日帰るし。」
いつものように鼻であしらうような返事をしながら、受話器の向こうで口を尖らせている顔を想像して口元を緩めた。それに彼は自分では気づかなかったのだけれど。
「ムキィ、相変わらずノリが悪いですねぇ、先輩ってば。オレも丁度電話しようと思ってたんだ!まるでテレパシーだなマイハニー!とか無いんですか。」
「無い。相変わらずで悪かったな。それで、何。随分テンション高いけど、」
いいことでもあったの?そう聞こうと思ったのに。それは一番元気な声で遮られてしまった。
「あ、はい。寂しいです!」
屈託なく、明るく抜けた声で言い放たれて面食らってしまった。飯食ってるか、掃除してるか、風呂入ってるか、ピアノ弾いてるか。いつもの電話にいつもの会話はきちんと用意されていたのに、一瞬で彼の言葉と思考回路は電話回線の中で迷子になってしまった。
「うん、」
ゆっくりと相槌を打つことしかできない彼に受話器の向こうで「今回は、遠いです。」と笑った。彼女の愛情表現は突飛で極端だとしても、不正解ではないと思う。素直の類をまるきり苦手とする彼には圧されることも多い。けれども幾度も救われていることがあることも彼は忘れてはいない。だから、彼女のように笑うこともできない。
「先輩、空港着いたら一番にのだめのトコロに帰ってきてくださいねー。掃除はしてないけど、そんなに汚くないですから。ご飯は先輩帰ってきてから一緒に食べましょう?お風呂もちゃんと入って待ってます。ピアノも聞いて下さいね?だから、」
「うん、そっちに帰るよ。」
すぐさま答えてやっても、彼女の好きや愛してるには到底足りないとも思っている。正面でも、電話ですらも、彼女を安心させてやる言葉もかけてやれない自分を少しだけ責めた。だけど彼女は受話器の向こうで笑っている。
「先輩も寂しい?」
「うん、」
少しの素直と寂しさのシェアは微かな優しさが残った。
けれども「それじゃぁ、」と柔らかな彼女の最後の声に、電話を切った後は彼の方が余計に切なくなってしまっていた。
着信音とディスプレイに浮かぶ文字に心がわずかに跳ねた気がしたけれど、彼は努めて平然とコールボタンで受けた。
「アロー!のだめです!」
「声でかい。着信見ればわかるから、何?」
二週間ほど離れることはよくあることだったが、九時間の時差を考えれば珍しい電話だ、と時計を見上げて思う。
「冷たい夫ですね。単身赴任中の夫が寂しくないように妻がラブコールしてるっていうのに。」
「夫でも妻でも単身赴任でもないし。明後日帰るし。」
いつものように鼻であしらうような返事をしながら、受話器の向こうで口を尖らせている顔を想像して口元を緩めた。それに彼は自分では気づかなかったのだけれど。
「ムキィ、相変わらずノリが悪いですねぇ、先輩ってば。オレも丁度電話しようと思ってたんだ!まるでテレパシーだなマイハニー!とか無いんですか。」
「無い。相変わらずで悪かったな。それで、何。随分テンション高いけど、」
いいことでもあったの?そう聞こうと思ったのに。それは一番元気な声で遮られてしまった。
「あ、はい。寂しいです!」
屈託なく、明るく抜けた声で言い放たれて面食らってしまった。飯食ってるか、掃除してるか、風呂入ってるか、ピアノ弾いてるか。いつもの電話にいつもの会話はきちんと用意されていたのに、一瞬で彼の言葉と思考回路は電話回線の中で迷子になってしまった。
「うん、」
ゆっくりと相槌を打つことしかできない彼に受話器の向こうで「今回は、遠いです。」と笑った。彼女の愛情表現は突飛で極端だとしても、不正解ではないと思う。素直の類をまるきり苦手とする彼には圧されることも多い。けれども幾度も救われていることがあることも彼は忘れてはいない。だから、彼女のように笑うこともできない。
「先輩、空港着いたら一番にのだめのトコロに帰ってきてくださいねー。掃除はしてないけど、そんなに汚くないですから。ご飯は先輩帰ってきてから一緒に食べましょう?お風呂もちゃんと入って待ってます。ピアノも聞いて下さいね?だから、」
「うん、そっちに帰るよ。」
すぐさま答えてやっても、彼女の好きや愛してるには到底足りないとも思っている。正面でも、電話ですらも、彼女を安心させてやる言葉もかけてやれない自分を少しだけ責めた。だけど彼女は受話器の向こうで笑っている。
「先輩も寂しい?」
「うん、」
少しの素直と寂しさのシェアは微かな優しさが残った。
けれども「それじゃぁ、」と柔らかな彼女の最後の声に、電話を切った後は彼の方が余計に切なくなってしまっていた。
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