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HAPPY BIRHT DAY to you!!
お誕生日おめでとうの話。

|機嫌を直して仔猫ちゃん!

1

いい匂いが外までしてました。そう言って恍惚とした表情で扉を開けた彼女は、打って変わって、今は仏頂面を全面にソファに足を上げている。横では手を組んだまま、目をあわすことが出来ない自分。

「…ケーキ、買ってきます。」

余りに居たたまれず、言葉にしたあと椅子にかけたジャケットを手に取った。彼女はというと返事もなく、目は窓の向こう。そんな彼女から逃げるように、アパルトマンの階段を足早に降りる。


リハが時間通りに終わって、普段ならテオの事務作業の手伝いなどもしているところだけれど、珍しくテオが満面の笑顔で「おつかれさま」なんて送り出してくれたので、久しぶりに丁寧に夕食の支度でも、と思っていた。ワイン煮込みの色と匂い、ちょうど良い頃合いに彼女の足音。随分と軽やかで、食卓に着くまで鼻歌も止むことが無かった。

「美味しそうー!先輩、最近忙しそうだったのに。のだめの誕生日だから呪文料理作ってくれたんですね。ありがとうございまーす!いただきまーす!」
「…。」

カチャリと彼女のフォークとナイフと皿の音。目の前の彼女から目一杯頬張る音まで聞こえてくるような。自分もフォークとナイフを構えてはいるのだけれど、それは頼りなげに宙に浮いたまま。
「先輩?」
まさに、凍り付いている自分に投げかけられる彼女の笑顔に、口の端があがる。

「た、」
「…先輩。」

言葉を遮るのは冷ややかな彼女の声で、彼女も同じ様にフォークとナイフを宙で止めてしまった。

「忘れてましたね?」
「たんじょうび、おめでとう。」
彼女はそれはゆっくりと笑って、ありがとうございます。と言った。
「いいんですよ?先輩忙しいの知ってましたし。たまたまでも呪文料理食べれてのだめ幸せですよ?いいんですよ?別に。のだめの誕生日なんて、いちいち覚えてられませんよね?」
笑顔を崩さずそう言うと、一口、二口と料理を口に運び、それ以上の言葉は無く皿の上はあっという間に何もなくなった。最後にグラスに残ったワインを一気に流し込んで、そのままソファに大きな音を立てて腰を下ろした。
無言のまま、続けて料理を口にして空の食器を下げてから彼女の横に腰を下ろす。二人、微動だにしない時間は何分間か、居たたまれず先に逃げてしまったのは自分だった。
きっと彼女は、今もソファであの姿勢を崩さないでいるだろう。

タバコの煙と一緒にため息をひとつ。閉店間際のパティスリーでショーケースに残っているケーキを一通り詰めて貰った箱は右手に重い。
道脇にある花屋で花束を作ってもらったが、これも店をしまうついでだからとやたら豪華に作られて、左手は余計に情けの無いことになってしまった。
自由にならない両手でドアを開けて、ゆっくりと部屋に入る。肩から力が抜けたのは、彼女がそれは穏やかな寝息を立てていたからで。テーブルに花とケーキを置いてソファの片側を沈ませれば、彼女はゆっくりと目を開いた。

「ごめん」
「せんぱ、」
続く言葉を唇で塞いだので、自分でもそうは思ってはいたが、「ずるい」と言われて情けなく笑った。悲しむのも怒るのも、キス一つで片付ける自分に若干呆れながらも、目でテーブルを促せば、やっといつもの奇声。
「むきゃー!ケーキ沢山! どれにしましょー。」
目を輝かせて箱を覗き込む彼女、普段の態度に戻ったように思えて妙に安堵した。ソファに身体を預けて、ケーキを楽しそうに選ぶ彼女を見れば、初めて見るワンピース。

「そのワンピース、初めて見たな。よく似合ってるよ。」
罪悪感の流れからか、まったく、滅多なことなんて言うもんじゃない。

「ヨーコから届いたんです、お誕生日プレゼントにって。」

またも彼女の冷たい笑顔に、つられて笑うしかなく。ワインをもう一本開ける提案をしてキッチンへと向かった。





「まだ、怒ってる?」
首もとに腕を巻き付けながらも、じっと見据えられた目。お互い熱を持て余している身体を一旦止めて聞いた。いいえー、といつもの調子でそう言ったあと、ぐいと顔を寄せて唇を深く合わせられる。言葉にしたいことはいろいろあったけれど、まるで呼吸さえ許されないような彼女のキスの調子に飲み込まれてしまう。それに夢中になるうちに、彼女の方も何か言いたげな表情は嬌声と共に消えた。

事後処理を終えて、ベッドに腰掛けてミネラルウォーターを飲みながら彼女を見やると、くたり、と倒れ込んだ彼女は力なさげに上半身を起こした。何秒か目を合わしたあとゆっくりと目を伏せる。そのまま足首を手に取り少し上に持ち上げてから踵をなぞる。先輩、まるで最中に漏らすような声を小さく吐いた。

「あのワンピースに似合う靴、プレゼントするよ。」

つま先に口づけて、彼女を見れば。顔を真っ赤にして今日何度目かの「ずるい」を言われてしまったので、笑ってやる。足から上へ、ゆっくりと身体を辿り、「誕生日、おめでとう。」キスの合間にそう言って、もう一度ベッドに沈ませた。




楽譜を準備して、リハに向かおうと事務所のドアに手をかければ、ドアの向こうで威勢の良い足音。入れ違いに息を切らして出勤してきたテオは、昨日と同じ笑顔を向けた。
「おはようチアキ!昨日、奥さんの誕生日はどうだった?」
「…?」
慌ただしくかばんを外し、業務準備に取りかかりながら言葉をつづける。
「昨日、奥さんの誕生日だったんでしょ?前々から奥さんに言われて知ってたから、僕、チアキに残業頼まなかったんだよー。」

「…それ、昨日言えよ…。」

携帯に、のだめからの今日の待ち合わせのメールが入る。

「千秋君…、もしかして、忘れてた…?」
脱力しきった背中に、黒木君の言葉がかかる。のだめに了解、と手早く返信をすませ、哀れみを含んだ目をした黒木君と、ホールへと向かった。

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